スノーボードHP女子予選2本目で転倒した今井メロは雪上車に引かれて運ばれる(撮影・田崎高広)メロの夢が散った。スノーボード女子ハーフパイプ(HP)でメダル獲得が期待された今井メロ(18=ロシニョール・ディナスターク)は、2本の予選でともに失敗した。前日の男子HPで予選落ちした兄の成田童夢(20)に続いて、決勝(12人)進出を逃した。腰痛を抱えたままの強行出場で、2本目の失敗後は立ち上がれず、横になったまま滑ってフィニッシュした。五輪での金メダルという兄妹の夢は、トリノの青い空に消えた。日本勢の最高は中島志保(27)の9 位で、金はハナ・ティター(19=米国)だった。

今井は右手の人さし指を突き立て、声を上げて飛び出した。後がない予選2本目、兄童夢の「思い切って行け」という激励に「やるだけや!!」と答えた。最初のエア、言葉通りに思いきり飛んだ。青い空に吸い込まれる高さで、自らのオリジナル技「メロウセブン」を見せた。しかし、着地でバランスを崩し転倒。痛めていた腰を強打し、動くことさえできなかった。

スタンドのファンが見守る中、今井は背中を雪面につけたまま、ズルズルと滑ってゴールを目指した。ゴーグルの中の目は見えなかったが、つらい気持ちはテレビカメラを通して日本中のファンに伝わった。駆け寄った競技役員を制するように、少しずつ動いた。初めて臨んだ五輪で、あくまで「完走」にこだわった。

フィニッシュラインを越えると、担架で医務室に運ばれ、ヘリコプターでトリノ市内の病院に運ばれた。今井は選手村に戻りたがったが、大会規定に従った。医務室で今井と面会した母多美江さんは「本人は大丈夫と言っている。医者も骨には異常はないと言っている」と話した。

昨年のW杯で総合優勝して、金メダル候補として臨んだ大舞台だった。童夢とともに「兄妹メダル」まで期待されたが、前日にその兄が失敗。「兄の分まで」と臨んだが、さらに悲劇的な結末が待っていた。兄は雪面を両手でたたいて悔しがったが、悔しさを体で表すことさえできなかった。

深刻な腰痛を抱えての強行出場だった。1月14日に札幌で行われた大会で、腰を痛めて病院に直行。その後は、痛みをだましながら競技を続けたが、トリノ入りしてから再び痛め、2日間も練習を休んだ。「大丈夫です」と気丈に話していたが、状態は最悪だった。

実は、1本目の失敗で腰を痛めていた。リフトで2本目に向かう時も、しきりに腰を押さえていた。すでに競技ができる状態ではなかったが、それでも強行した。全日本スキー連盟の大西祥平・医科学委員長は「こちらに来てからも、できる限りのサポートをしていたのに」と、残念がった。

「夢」と言い続けてきた五輪のメダル獲得。トップ選手に育ててくれた父隆史さんとの決別、用具契約の遅れで五輪内定取り消しのピンチもあった。それまでの「成田夢露」から実母の名字である「今井メロ」と改名したのが昨年9月。そんな中でも兄と2人で誓った「夢」は忘れなかった。

今井の最初の五輪は、わずか2回エアを飛んだだけで終わった。それでも、競技人生が終わったわけではない。力を出し切れなかった兄とともに、再び挑戦するはずだ。まだ18歳。ドラマは、始まったばかりだ。
(日刊スポーツ)