成田童夢、今井メロ兄妹ら、ワールドカップ(W杯)など今季の国際大会で男女5人の日本人が優勝し、トリノ五輪で日本の初メダルが期待されているスノーボードのハーフパイプ。だが、現実はそれほど甘くなさそう。ふだんはプロ活動に徹し、国際舞台には出てこない米国勢が、想像以上に強そうなのだ。

予定よりも20分以上遅れ、公式会見の壇上に上がった米国ハーフパイプチームの8人は、それぞれが思い思いにマイクチェックを始めたり、余裕の表情で足を組んだり。よほど行儀の悪いメンバーばかりを集めたのでもない限り、その態度は「王者の貫禄」と呼ぶべきものだった。

実は、「世界チャンピオンはソルトレーク五輪で金を獲った女子のケリー・クラークだけ」(米NBC記者)という通り、米国勢には国際舞台での実績がほとんどない。それでも、圧倒的な優勝候補と目されるのは、米国のトップがふだん、「Xゲーム」など優勝賞金10万−20万ドル(約1180−2360万円)ものビッグマネーをかけた国内賞金レースで戦っているためだ。

日本勢のメダルラッシュに沸いたW杯に出てくる米国勢は、「野球に例えるなら3軍」(日本代表の中井孝治)とか。

前出NBC記者は、「そもそもスノーボードは米国生まれのスポーツ」と、米国勢がW杯に関心を示さない背景を示唆する。W杯を運営する国際スキー連盟は、長野五輪後にジャンプ競技で日本が不利になるルール変更を行ったように、欧州が牛耳っている。

会見で壇の中央に座った男子のショーン・ホワイトは、そんな“米国スノボ至上主義”の象徴的な存在だ。11歳の長野五輪当時は「五輪よりもパワーレンジャー(米国特撮テレビ)に関心があった」といい、13歳でプロに転向。19歳の現在はすでに家を3軒、「大会の副賞で稼いだ」と車も複数台所有(免許は取得中)し、アメリカンドリームを成し遂げた。

「自分にとってXゲームはW杯よりも大きい、アメージングなイベントだ。Xゲームには、W杯で優勝する世界の強豪も出ている」と、国際経験が少ないとする質問を一笑に付した。

日本の報道陣から質問が飛ぶと、「コンニチワ」と片言の日本語で笑わせ、「カズ(国母和宏)はエアが高くて素晴らしいライダーだ。日本とフィンランドが最大のライバルだろう」と、余裕の受け答えでリップサービスも欠かさない。

女子でも、Xゲーム覇者のグレッチェン・ブライアーが、「日本の選手ではXゲームで3位のソーコ(山岡聡子)と、あと1人…すごく若い女の子もいたわね」。日本期待の今井メロは名前も認識されていないらしい。

そんな米国勢も今大会については、「世界中から注目が集まるし、私たちはUSAチームの一員だ」と口をそろえ、モチベーションが高い。もちろん「五輪のゴールドメダルは、自分のキャリアを高める効果がある」(NBC記者)ためだ。

世界的な視点から見れば、むしろダークホースは日本の側。日本選手団の目標「メダル5個」のうち1個を背負わされ、責任が重くのしかかっている。
(夕刊フジ)