【滋賀県】「日本百名山」にも数えられる県内最高峰の伊吹山(1377メートル)。その観光の主軸を担ってきた伊吹山スキー場(米原市上野)の営業が、今月末で終わる。経営する近江鉄道(彦根市)の撤退まであと半月となった現在も、施設の引き受け手や跡地利用などのめどは立っていない。

伊吹山スキー場は、3合目を中心に広がる関西地方で最も歴史のあるスキー場。近江鉄道が1957(昭和32)年、地権者らに用地を借りて経営を始めた。ゴンドラ1基とリフト11基、3合目の伊吹高原ホテルなどがあり、ピーク時の84年には19万人が訪れた。

しかし温暖化による深刻な雪不足から、今季は3万5千人まで低迷。87年以降は年間平均1億8千万円の赤字を計上してきた。

西武グループの合理化の一環として5月に撤退を決めて以降、同社は施設の引き受け手を探している。

だが、南向きゲレンデのため人工造雪機で雪を降らせてもすぐ溶けてしまう悪条件に、積極的に手を挙げる業者は、容易には見つからない。

地元住民にはあきらめの表情も。民宿を経営する女性(52)は「夏場の登山客をほそぼそとでも泊めていけたら」と語る。冬場は落ち込んだ近年でも、夏場はユウスゲなど草花を楽しむ登山客が徐々に増えつつあった。しかし、3合目まで客を運ぶゴンドラが動かなければ、ふもとから歩を進める本格的な愛好家しか登れなくなってしまう。

上野区は「伊吹山対策委員会」を設置、住民らが地元としての方針を話し合ってきた。

だが、これまで当然のように同区の観光を支えてきたスキー場の存在はあまりにも大きく、意見はまとまらない。森田清志委員長(67)は「何か妙案がないものか」と頭を抱える。

市は静観の構えだ。平尾道雄市長は「『官から民へ』の時代に、民間が手掛けていた事業を市が引き受けるという話には到底ならない。まずは地元が今後の方針を打ち出さないと」と指摘する。

とはいえ、伊吹山は近江町編入で今月あらためてスタートを切った市のシンボル。放置すると、市全体のイメージダウンにつながりかねない。

同山ろくにことし4月、市も出資してオープンした第3セクターの道の駅「旬彩の森」(同市伊吹)を運営する「伊吹・旬彩」の谷口康社長(51)は「冬は順調な奥伊吹スキー場への通り道にあるからまだいいが、夏場はうちにも大きく響くだろう」と懸念。自らも近くの上平寺地区のまちづくりに取り組んできた経験から「どの地域にもほかに負けない特色が必ずある。地元の人がやりがいを持てることに積極的に取り組んでほしい」と訴える。

今後の見通しが立たないまま、寂しい冬を迎える伊吹山。地域が一体となり、全力で知恵を絞り出す時期に来ている。
(中日新聞)